広島:これぞ育成のカープ。ピークに合わせて主力を作る
投げた投手:26人
およそ33%近くを27歳の投手5人で稼いだのが広島。即ち大瀬良182、九里120、一岡56、今村38、飯田13。
アスリートとしてピークを迎えるであろうこの年齢で先発・リリーフ共に主力に育った事が高く評価出来る。
また、次の世代に当たる薮田や岡田、高橋昂と云った若い投手も起用されており、将来性も期待出来る。
広島はこうした育成プランが明確で、その運用の上手さがチームの強さに直結していると言えるだろう。
チーム編成としてはベテラン投手が少ない広島。
最年長は永川だが、その後に並ぶのはジャクソン、カンポス、ヘルウェグと云った助っ人投手だった。
その下の福井はトレード、佐藤祥は退団、中村恭は今シーズン14イニングに留まり、29歳の野村が安定している以外は10年近いがら空きの世代である。
この世代は万年Bクラスだった時代のドラフト選手。言い換えると、10年ほど前から広島の編成・育成は変わったのである。
新世代の投手を着実に育成し、戦力を入れ替え、それが整ったらがら空き世代を助っ人で埋める。大改革は成功していると云ってよいだろう。
これほどまでに上手く世代交代が進んでいるチームならば将来的にも何も心配は無く、強いて言えばリリーフ投手の勤続疲労が心配な程度。
アドゥワがそうであった様に、中崎ら勝ち継投さえ脅かす新リリーバーの登場が広島の次の目標と思われる。
ヤクルト:総合的なバランスは良し。ただしすきま世代に注意
投げた投手:28人
火ヤク庫と云われたシーズンもあったものの、年齢別で見るとバランス良く投げているのがヤクルト。原、風張、中尾と云った若い投手がおり、石川、近藤と云ったベテラン投手も元気にチームを支えている。
こうして見るとバランスが良い様に感じられたが、ところどころ投げていない世代も垣間見える。
例えば22,23歳が登板しておらず、石山を除けばピークの筈の30~32歳も殆どいない。
こうした隙間の世代が存在すると、衰えた世代、若しくは未成熟な世代にしわ寄せが偏って不振を招く事もある。編成に気を遣うべきだろう。
加えて、33歳以上で投げまくっているハフ、近藤、石川に支えられている事と、カラシティーとブキャナンで280イニングを投げている点にも注意したい。
この辺りは代えが効かない(と云いつつカラシティーが退団した)ので、戦力を安定させる為にも早急な育成が求められる。
その為、先日高梨をトレードで獲得したのは効果的な補強だったと思われる。
こうした補強を行いつつ、若手の起用を増やし台頭を待ちたい所。まずは来シーズン、中堅に差し掛かる投手の奮起が期待される。
巨人:中心世代に柱がズラリ。次世代の柱の成長待ち
投げた投手:26人
グラフにすると一目瞭然、30歳前後の脂が乗った時期の世代がきっちりとイニングを稼いでいるのが巨人である。
広島と比較すると少し年齢が高いが、編成としては上手く進んでいると感じられる。ブルペン運用は改善しなければいけないが。
巨人の補強の方向性は決して間違っていない。
計算出来る選手を増やせば未知数の戦力が減る。それだけでも安定するし、結果的に若手の育成に割けるリソースが明確になるからである。
その次世代を担う候補だが、現時点では先発なら23,24歳の田口、今村、メルセデス、リリーフでは宮國や中川と云った所。
まだ100イニングor30試合と云ったラインに乗るか乗らないかの発展途上であるが、早ければ来シーズンにも台頭が目される。
勿論若い内からの酷使は避けるべきだが、ここから一軍に定着し主力になり得る選手が飛び出て来ればセの王者に返り咲く基盤が出来る筈。
DeNA:低迷期を脱却。今後5年で更なる上積みを
投げた投手:26人
際立ったのは若手戦力の多さ。23歳となる東、濵口、平良、砂田の4人で全投球回のおよそ25%を占めている。
その他にも25歳組の石田と今永、26歳組の山崎、エスコバーが並んでいる事からも分かる様に、DeNAは投手事情がかなり若いのである。
今シーズンは規定投球回到達者が新人の東一人だけ、と言われたが、これだけの即戦力が揃っていれば将来性も高い。
誰が急成長を遂げてもおかしくないチームである事は間違いないが、計算出来る安定した戦力、と云う点では広島・巨人にやや劣るか。
それでも育成さえ間違えなければ数年後のビジョンははっきりしており、今後の躍進が期待されるチームである。
ベテラン投手が少ない事からも分かる様に、広島と同じく低迷期から脱却し新しい戦力での運用が進んでいると考えられる。
中日:即戦力と素材の狭間で模索中。先/中の柱は誰か
投げた投手:30人
全体的にまとまりが無いのが中日。
年齢別に偏った所は無いが、中心となる選手も見当たらない。先日ガルシアの退団が発表され、再びエース探しの旅が始まった。
生憎ベテラン投手陣まで振るわなかったのが今シーズンであり、来シーズン復活するかに関わらず世代交代は急務となる。
今後いかに投手陣の大黒柱を立てるかによって、中日の5年後、10年後の予想図は大きく変わりそう。
暫くは外から補強しつつ若手投手を育成する事になる。
そんな次世代候補だが、今シーズンに限れば先発では若い笠原、小笠原が、リリーフでは佐藤、鈴木と云った投手が将来性を見せた。
まだ若く経験も少ない為、今後は彼らを中心に育成を展開する事になるだろう。
世代の偏りそのものは少ない為、若手にもチャンスの多い現状で下拵えは出来ていると思われる。
上記の選手はもちろんの事、来シーズン芽を出すであろう投手達がどうなるかは育成次第。
阪神:ベテランが支えたリリーフ、次期セットアッパーは誰の手に
投げた投手:30人
阪神は若干ではあるがベテラン投手陣の割合が多かった。と云っても先発で多かったのはメッセンジャーだけ。つまりおじさんリリーフが沢山投げているのである。
実際、投球回=先発は岩貞、小野、秋山、才木、藤浪と若手~中堅投手がランクしているのに対し、登板数=リリーフになると世代がガラリと変わる。
この高齢なリリーフに割って入るのが岩崎と望月であり、今後この二人を中心に世代交代を進めたい。
比較すれば先発投手には将来性もある。加えて投手陣全体の構成を見ても世代の偏りは目立たない。編成は悪くない分、育成を急ぐべきだろう。
事実、今シーズンは30人もの投手が一軍のマウンドに登板しており、首脳陣も世代交代を急務と見ている様である。
近年は助っ人リリーバーの活躍も多く見られる阪神。補強が上手く行っている内に育成を進めたい所。
西武:若手投手の台頭待たれる。常勝復活の鍵は誰か
投げた投手:31人
西武は12球団最多、31人の投手が登板した。
分布で見ると30歳以上の割合が若干多く、先発十亀と榎田が250イニング。ヒース、ワグナー、ウルフの120イニング程度が占める。
ベテランのリリーバーが不在な西武は今の内に次世代の先発・リリーフの強化を進めるべきであろう。
特にリリーフは急ぎたい。本来は増田や小石と云った投手がいる筈だったが、彼らの不調が結果的にリミットを縮めてしまった。
中堅に差し掛かる平井・野田がその穴を埋めたのが幸いだったものの、来シーズンも同じ保証は無い。
多数の選手がリリーフで登板している事からも分かる様に、今後の成長が世代交代に間に合うかが焦点になる。
ところで、来季はエース菊池が移籍する為、そのイニングを誰が稼ぐかが気掛かりである。
既に170回を投げた多和田、ベテランになる十亀と榎田にこれ以上の負担を掛ける事は難しく、新星が現れなければこちらも補強が必要。
今シーズンの分布を見る限り、西武は24歳以下の投手の割合が少なかった。
連続Vを狙うのであれば、今井を筆頭にこの若い世代の選手達が結果を残す事が必須条件となるだろう。
ソフトバンク:若手~中堅世代が細かく分担。世代交代は何時でもOK
投げた投手:28人
25,26歳の5人で450イニングを投げたのがソフトバンク。千賀、武田、石川、森、岡本もよく投げた。
ローテに入っている中田やバンデンハークと云ったベテランの跡を狙う世代として充分に計算出来るだろう。
規定投球回に達した投手こそいなかったものの、戦力がいない訳では無く、台頭を狙う若手~中堅の世代が競争した結果と判断出来る。
戦力と云う意味では申し分無い。あくまで今シーズンはリリーフの登板過多が目立った事に注意しつつ、エースの登場を待ちたい所。
少し気になるのが世代の波。
例えば30代は五十嵐、サファテ、攝津(退団)、中田、寺原(退団)、バンデンハーク(33歳)と並んでいる。
この次が岩崎、ミランダ、嘉弥真の29歳組であるが、この境目が4年分空いている。
それでも若手の松本や大竹、モイネロ、高橋で分担しており、大きな問題は無いと思われるが……。
30代のベテラン投手が今後何時まで活躍出来るかも未知数である為、リリーフが元気な内に先発投手の軸を固めたい。
日ハム:超若手主体のチーム。高速サイクルに追い付いていない?
投げた投手:29人
DeNAに匹敵する若手主体の投手運用になったのが日ハム。30歳以上でそれなりに投げたのが村田と宮西だけである。
毎年の様に戦力が変わるチームとあって、世代交代も非常に早い事がこのグラフに現れている。
若手が多い事は将来性の点では全く問題ないが、安定感の点で不安が残る。
チーム編成としては24~27歳を主力として計算しており、実際成績的にも悪くない。日ハム編成部の理と実はかみ合っていると評価出来る。
ただ、絶対的エースやクローザーと云った投手の柱が決まり切らない事も事実。
先発は上沢とマルティネスが引っ張ったがもう一つであり、抑えは石川とトンキン(退団)で試行錯誤した今シーズン。
これらの投手が更にワンランク成長し、”上限突破”が叶えばソフトバンクとも渡り合えるだろう。放出しなければ、の話だが。
投手力の安定化が今後の課題となる。
オリックス:エースが移籍、その穴埋めは若手か中堅か
投げた投手:27人
28歳のグラフが目立つオリックス。この年代は西を筆頭にディクソン、ローチ、松葉、金田の5人が揃っている。
ところが、その西とローチ、更に100イニングを投げた金子が退団した事で、来シーズンの分布に大きく影響が出る事が考えられる。
つまり、来シーズンは未知数。
穴埋めに関しては若手の山岡や田嶋が期待込みで上乗せされると云う見通しであるが、松葉、東明と云った中堅の選手の奮起は欠かせないだろう。
今後の補強に就いても先発型の投手が必要である事は間違いない。
人的補償か助っ人か、いずれにしても若手の競争も含めた編成の腕が問われる。どの世代がどんな結果を出すかで来シーズンの順位は大きく変動するだろう。
分布を見る限り、リリーフは若手・ベテラン共に良く投げている為、補強を急ぐ所では無さそう。
とにかく必要なのは先発投手と言えるだろう。
ロッテ:主力は30代、次世代リリーバーの育成を急げ
投げた投手:29人
ロッテは30歳の前と後とで丁度半々に分かれた。これは涌井、ボルシンガー、石川とイニングを稼いだ結果であり、12球団で最も高齢化が感じられる。
若い先発には二木、酒居、有吉と世代のバランス良く続いており、こちらは戦力としても計算可。
先発としての競争が求められる事に変わりは無いが、将来性込みでも穏やかな世代交代が進むと思われる。
問題はリリーフ。若手で登板数を増やした投手が少なく、中堅~ベテランがかなりのイニングを投げている。
その世代が安定していたと云う事だが、言い換えると若手リリーバーの駒が少なかったと云う意味でもある。
先発が計算出来る分、リリーフの育成・補強が遅れると苦しくなりそう。故障がちな内の代役を務められる若手が台頭出来るか否かで編成は大きく変わるだろう。
当面は若手の育成を優先的に進めるべきだが、中堅~ベテランで凌げるリミットは限られている。
楽天:鬼の居る間に育成を。期待株は多いが……
投げた投手:28人
パッと見れば34歳、27歳、23歳が大きな分布を占める楽天。岸・則本の両エースと松井・古川の若手コンビによるところが大きい。
それ以外も年齢別で偏った所は殆ど無く、下地としては整っている様に感じられる。何処が不足していると云う事は無さそうである。
後は「埋まっている所は埋まっているが、埋めきれない所は埋めきれない」と云った具合の差を縮めていく事になると思われる。
例えば先発では23歳の古川、20歳の藤平がいるが安定しているとは言えず、塩見、美馬、辛島など30歳前後の投手もイニングを分け合っているのが現状。
リリーフも26歳組の高梨、宋が活躍しつつもややベテランに頼りがちである(30歳前後の投手が殆どいない事もあるが)。
素材はあるが育成がもう一つ決まりきらないと判断する場合、こうした格差を解消しなければ上位浮上は難しいだろう。
高齢の岸・ハーマン、MLBの噂もある則本が元気な内に、次世代の若手先発の成長とリリーフの育成に注力すべき